ドローン物資輸送「裏側レポート」

こんにちは、中村一徳です。埼玉県の秩父地方でUAV操縦の代行や機体の製作、プロパイロットの育成、企業向けUAV導入コンサルティングなどを行っています。私たちプロパイロットは、通常ドローンのことを無人航空機を意味するUAV(Unmanned Aerial Vehicle)と呼んでいます。しかし、一般的にはドローンと広く認知されていることから、この記事でも分かりやすいようドローンという呼び方を使っていきます。

今回のテーマはドローンの物資輸送です。現在、ドローンによる物資輸送を実現しようと、大手企業や官公庁が実証実験を繰り返していますが、連日のように墜落・事故のニュースが流れるなど、まだまだ実用化までは遠いようです。そこで、今回は中小企業でも低コストかつスピーディーに導入できるフリークスガレージ式(以下FG式)のドローン物資輸送をご紹介したいと思います。

FG式ドローン物資輸送とは?

ドローン物資輸送「裏側レポート」
フリークスガレージ式では、ドローンによる物資輸送は2オペレーション操縦で行う。山なら麓と頂上にそれぞれパイロットを配置し、目視飛行で遂行する。
埼玉県皆野町と早稲田大学、フリークスガレージの共同による、去る3月に行われたドローンによる物資輸送の実証実験の模様。

2023年3月17日、某所で「埼玉県皆野町」と「早稲田大学」「フリークスガレージ」共同によるドローン物資輸送が行われました。この日は災害救助を想定し、山の麓から約1km離れた頂上の集落に、5kgの救援物資をドローンで運びました。麓と頂上にパイロットを置き、約5分で1往復の輸送に成功しました。

フリークスガレージのドローンによる物資輸送では、2オペレーション操縦を行います。2オペレーション操縦とは、ドローン・パイロットを機体の離陸地点に1名、着陸地点に1名配置し、合計2名で1台の機体を操縦する方法です。2オペレーション操縦なら、山や谷など機体の電波が途切れやすいところでも、安全に長距離飛行ができます。これがFG式のドローン物資輸送です。

例えば、山の麓と頂上にドローン・パイロットを配置することで、1つ山を越えた先に物資を運ぶこともできます。その場合、まず麓のパイロットが機体を山の頂上付近まで目視しながら飛ばします。次に麓のパイロットは、頂上のパイロットが機体を操縦できるよう、送信機のスイッチを操作して操縦の権利を相手に渡します。操縦の権利を受け取った頂上のパイロットは、山の反対側の麓に、機体を目視しながら着陸させます。

このように、2オペレーション操縦なら、常にパイロットが機体を目視しながら操縦できます。また、自動航行とは違い、自分たちで機体をコントロールできる時間が長いため、不測の事態が起きても対処できます。

今回のドローン物資輸送は、離陸側にフリークスガレージの上級パイロットの新井を置き、着陸側は中村が担当しました。新井はまだ20代ですが、普段は測量現場で小型~大型機を毎日飛ばしており、操縦の腕は確かです。2オペレーション操縦は、お互いの腕と信頼が成功のカギとなります。

ちなみに、このときは物資輸送中の機体を別の機体で追いかけて、記録用に撮影していました。そのときの撮影は、当社の上級パイロットの嶋貫が担当しました。物資輸送中の機体に近づき過ぎず、一定の距離を保ちながら、かつ高速で飛ぶ機体がフレームから外れないように撮影する。それを達成するには高度な操縦が必要です。ドローンのパイロットになるには、安全かつ正確に飛行するための知識や技術を、何年もかけて積み上げなければなりません。

FG式ドローン物資輸送は
導入費用が安く、すぐ実施できる

FG式であればマニュアル操縦で作業を行うため、オペレーターの育成と機材のコストは200~300万円という低コストで導入できる。

フリークスガレージのドローン物資輸送のメリットは、低コストで実施できることです。大手企業はドローン物資輸送を自動航行で行うため、インフラ設備が必要となり、導入だけで数千万円ものコストがかかります。また、機体代も数百万円は必要です。一方、FG式ならパイロットの育成費用や機体代など含めて200~300万円あれば一式導入できます。最低でもパイロット2人と安価で性能の良い機体があれば実行可能です。

また、私たちのやり方であれば、すぐにでも現場で実施できます。なぜなら、この方法は自動航行ではなく「マニュアル操縦」で行うからです。事前に飛行ルートをプログラムする必要がないので、非常に素早く機体を飛ばせます。例えば、建設現場で1km離れたところの資材を持ってくるのに車で往復20分くらいかかるところが、5~10分程度で済みます。「倉庫から資材を持ってきて、機体に積んで!」と事務所に電話一本すれば、5分後には資材を受け取れます。

今回のドローン物資輸送は5kgの荷物を積み、1kmを5分で往復しました。この機体は私たちが自社開発したオリジナル機で、最大10kgまで荷物を積めます。もし10kg積めば、10往復した場合「10×10=100kg」分の物資を運べます。それも、1往復5分なので50分程度で。もし50往復すれば、250分で500kg分の荷物が運べます。そのために必要な大掛かりな設備や準備、大きな資金は不要です。機体によっては30kgだって運べます。

FG式ドローン物資輸送を
導入すべき業種は?

実証実験は、災害時に山の上で孤立している集落へ救援物資を届けるというもので、無事に成功。防災関係者にも注目してほしいと中村氏は語る。

測量や建築、土木や林業などの業種は、すぐにでもフリークスガレージのドローン物資輸送を導入すべきでしょう。重い材料や道具も安全に素早く運べます。時間短縮と人件費の削減が可能になります。例えば、林業であれば苗木や苗木を守る杭、チェーンソーなどの道具を、山の麓から頂上に5分程度で運べます。ただ私たちのやり方ですと、5km、10kmといった距離は難しいです。安全・確実性を考えると、1km程度の輸送距離がよいでしょう。通常は、それくらいの距離で十分に目的を果たせるはずです。

今回のドローン物資輸送は、「災害時に山の上で孤立している集落へ救援物資を届ける」ということを想定し、実施しました。たとえ災害が起きても、機体の着陸地点に近いところまでパイロットが行ければ、2オペレーション操縦は可能です。機体を目視しながら離着陸できればよく、必ずしもパイロットが着陸地点にいなくても大丈夫です。そのため、現場の状況に柔軟に対応できます。低コストですぐに実施でき、その場に合わせて応用ができる。そうでなければ人の命は守れません。ぜひ防災に携わる方々にも導入していただきたいです。

導入に一番必要なのは
「マニュアル操縦力」

FG式の運用に欠かせないのはドローン・パイロットの能力の高さだ。特にマニュアル操縦のスキルを必要とする。しかし、マニュアル操縦であれば状況の変化に柔軟に対応でき、事故を大幅に減らすことができる。

連日のように大手企業や官公庁がドローンを墜落させているニュースがメディアで流れていますが、ドローンの自動航行は不測の事態に対処しづらく、まだまだ安全とは言い切れません。プログラム通りの飛行しかできない自動航行では、その場その場の状況変化に対処できません。例えば、急に風が強くなってきたり機体の周りに鳥が集まってきたり、物陰でGNSS電波が入らなくなったりするなど、ドローンの飛行中はいろいろなことが起こります。これらは、私たちのように毎日現場で飛ばしているパイロットなら当たり前に想定しています。しかし、残念ながら大手企業や官公庁は、不測の事態は想定外のようです。そういうことから、大手企業や官公庁が進めるドローン技術は実証実験の段階で止まっており、実用化までいっていないのが現状です。これは日本のドローン発展が遅れている原因の一つです。

現場でドローンが想定通りに飛ぶことはほとんどありません。例えば、今回のドローン物資輸送の日は非常に強い風が吹いていました。そういうときは「風が強いから1本目の飛行ルートはこっちにして、もう1本目の飛行ルートはこっちにしよう」など、その場で決めなければなりません。機体の離着陸もそうです。現場の地形や状況を見て「ここから飛ばそう」「あそこに下ろそう」と判断します。実際、私たちはこの日、この場所で初めて飛ばしました。災害現場なので当然ですよね。リハーサルはなく、ぶっつけ本番です。その場その場で想定外の出来事に対応できなければ、危なすぎてドローンを仕事に使うことはできません。

安全にドローン物資輸送をするのであれば、自動航行ではなく「マニュアル操縦」を習得するしかありません。ここで言う「マニュアル操縦」とは、GNSSや各種の安全センサーを切った状態でも、まるで手足のように大型機を操れることです。「マニュアル操縦」ができないと2オペレーション操縦はできません。

「マニュアル操縦」については、『最新ドローン完全攻略16』の「ドローンで安全に素早く『物資輸送』ができる『2オペレーション操縦』の技術」『最新ドローン完全攻略19」の「ドローンの事故を防止する『マニュアル操縦』」で詳細を書いていますので、ぜひ一読ください。インターネットや巷のドローン・スクールでは学べないことが書かれています。

ドローン物資輸送時の
安全操縦テクニック

2オペレーションの場合、2人のパイロットが向かい合った位置にいることがある。その際、機体の操縦権を受け取ったパイロットに対して機体は対面になるため、操縦を容易にして安全を確保するうえで、機体の後方を見て操縦する“ケツホバ”にする必要があるので180°の回頭を行う。

私たちプロのドローン・パイロットは、機体を常に目視しながら飛ばします。なぜなら、機体を目視していないと不測の事態に対処できないからです。もし機体の挙動がおかしくなれば、即座に対処しなければなりません。さもないと墜落・事故を起こします。

この日も山の頂上で物資を下ろした後、山の麓のパイロットが機体を目視できるように、高く上げました。山の麓のパイロットが機体を確認できたら、操縦の権利を渡します。操縦の権利を受け取った麓のパイロットは、このとき機体を180度回転させます。なぜ向きを変えるのか分かりますか? より安全な飛行のためには、機体の尾部を自分に向けた方がよいからです。180度回転させないと、麓のパイロットから見て機体は対面のままです。対面のままだとスティック操作が逆になり、操縦が難しくなります。現場は操縦テクニックを自慢する場ではありません。格好をつけず、安全を優先します。

目視飛行では、安全に操縦できる向きに機体を修正する。技術を見せびらかす必要はなく、無用なトラブルを避けるため、あえて操縦の難易度が上がる対面操縦など行う必要はまったくない。

麓のパイロットが操縦の権利を受け取り、機体の尾部を自分に向けたら、その後は着陸に向けて下ろしていきます。着陸側は通路が狭く、建物もあり、また電線もあちこちにあります。このような状況で自動航行はできません。今回も、私たちは離陸から飛行、着陸まで、すべて「マニュアル操縦」で行いました。山の麓から頂上まで1kmの距離を、5kgの救援物資を積み、5分で往復しました。このようにドローンの物資輸送を安全に遂行するには、「マニュアル」による「2オペレーション操縦」がベストです。

「うちの会社もできるの?」

物資を届けて無事に帰還する。派手さはいらず、地味でも確実に遂行できることが一番。そのためFG式では自動航行では成し得ない柔軟性をもつマニュアル操縦で行うことを取り入れている。

今回ご紹介したFG式ドローン物資輸送は、物資輸送以外にも応用できます。実際、「うちの会社のこんな業務でもドローンは使えるの?」という質問をたくさん頂きます。できることもありますし、できないこともあります。詳しく話を聞かないとわかりません。自社でのドローン導入を本気で考えていらっしゃるのなら、「ドロ―ンを導入して実現したいこと」「導入までの期日や予算」「パイロットの数」などを添えて、一度フリークスガレージまでご相談ください。

今回のドローン物資輸送の映像はこちら