ドローンの事故を防止する「ラジコンの技術」後編-最新ドローン完全攻略18

こんにちは、中村一徳です。埼玉県の秩父地方でUAV操縦の代行をはじめ、機体の製作、プロパイロットの育成、企業向けUAV導入コンサルティングなどを行っています。

私たちプロパイロットは、通常ドローンのことを無人航空機を意味するUAV(Unmanned Aerial Vehicle)と呼んでいます。しかし、一般的にはドローンと広く認知されていることから、本記事でも分かりやすいようUAVではなく、ドローンという呼称を使って進めていきます。

前回の記事※では、年々ドローンの事故が深刻なほどに増えていることを見てきました。その原因は、操縦者の多くに「安全な飛行」のための意識や知識、技術がないこと、そして「安全な飛行」を教えられる人や団体が少ないことにありました。そうしたことから、国土交通省のホームページにある「無人航空機による事故等の情報提供」には、ドローンの事故事例が数多く掲載されています。
参照:国土交通省HP「無人航空機に係る事故等報告一覧」
ドローンの事故を防止する「ラジコンの技術」前編/「最新ドローン完全攻略17号」掲載記事

そこで今回の記事では、ドローンの事故や墜落を防止する技術として、「ラジオコントロール」について取り上げていきます。「ラジオコントロール」によって、安全な飛行に対する意識や知識・技術が増え、ドローンの事故を予防できます。また、ドローンで仕事をする上で知っておかなければならないことが分かります。では、具体的に見ていきましょう。

ドローンの事故防止のカギは
「ラジオコントロール」にある

ドローンの事故を防止する「ラジコンの技術」後編
中村氏のドローンスクールでは、知識がない人のためにラジコンカーやラジコンヘリ、ラジコン飛行機の模型を教材に使って「ラジオコントロール」を基礎から教えている。故障したマルチコプターをバラして不具合を見るなど、より専門的なことも学べる。

ドローンの事故を防止するには「ラジオコントロール」の理解が必須です。まずは「ラジオコントロール」について詳しく述べていきます。習得すべき理由や、なぜ事故を防止できるのかなどもお伝えします。

「ラジオコントロール」とは?

「ラジオコントロール」とは、離れたものを無線で遠隔操作するシステムのことです。略してラジコン、またRC(アールシー)とも呼ばれます。「ラジオコントロール」で動くものは、ラジコンカーやラジコンヘリコプター、ラジコン飛行機などがよく知られています。もちろん、皆さんがよく知るマルチコプターもそうです。遠隔で操作するものは、すべて「ラジオコントロール」です。例えば、玩具屋で買える子ども用のおもちゃも、ケーブル(有線)でつながっておらず電波(無線)で遠隔操作ができれば、それは「ラジオコントロール」です。また、本体だけでなく電波での無線遠隔操作に関わる周辺機器も「ラジオコントロール」に入ります。

「ラジオコントロール」はドローンの土台となるシステムです。例えば、送信機の情報を機体に送るときに「ラジオコントロール」が使われます。「ラジオコントロール」によって、機体は空を飛びます。また、ドローンを自動航行させるとき、タブレットで地図を開いてその情報を電波で機体に送りますが、これも「ラジオコントロール」です。以前、DJI社が、次世代産業用ドローンと呼ばれる「Matrice 30」を発表しました。この機体は、プログラムすれば自動で離陸し、自動で着陸し、格納箱の中で充電を始めます。これも「ラジオコントロール」です。「ラジオコントロール」は、送信機に設定をプログラムする際にも必要となります。つまり、「ラジオコントロール」なしではドローンは成立しません。

そのため、「ラジオコントロール」の原理を分かっていないと、ドローンの墜落や事故は防げません。「ラジオコントロール」は、機体にどんな設定をするか、どんな飛ばし方をするか、どんな操縦をするかなど、さまざまなところに影響があります。「ラジオコントロール」が理解できていないと、何か不測の事態が起きた場合、対処ができません。実際、風が強いにもかかわらず標準の設定で飛ばしていると、操縦を誤ってしまうこともあります。それも事故の原因です。

しかし、まだまだ「ラジオコントロール」とドローンがイコールで結びつかない風潮があります。例えば動画投稿サイトで、ある投稿者が「ドローンはラジコンじゃない!」と言い切っていました。その方の言い分はこうです。
「ラジコン(カーやヘリ、飛行機など)は自分で操縦するから難しい」「でも、ドローン(マルチコプター)は、プログラムすれば自動で飛ぶ。ラジコンじゃないから簡単だ」と。
どうも、「自分で操作するもの=ラジコン」「自動で動くもの=ドローン」と思い込んでいるようです。

この方の見解には2つの誤りがあります。そもそも自分で機体を操縦する・しないに関係なく、無線で遠隔操作することが「ラジオコントロール(ラジコン)」なのです。もう1つは、ドローン=UAV(無人航空機)なので、ドローンという呼称はマルチコプターだけでなく、ラジコンのヘリや飛行機のことも含みます。よって、ドローン=ラジコンとなり、「ドローンは別物だから簡単だ」とは言えません。せめて自動操縦(プログラミング飛行)で飛ばした場合に限り“操縦者の負担が軽減される”(簡単という表現とは異なる)という解釈に留めておくべきでしょう。

「ラジオコントロール」を習得すべき3つの理由

「ラジオコントロール」を習得することで、ドローンの安全な飛行に対する意識や知識・技術が養われます。また、誰から操縦を習えばよいかも分かります。

「ラジオコントロール」を習得すべき理由1

「安全な飛行」に対する意識が芽生える

「ラジオコントロール」を学ぶことで、ドローンの安全な飛行に対する意識が養われます。安全への意識がないと、大怪我や死亡につながる事故を起こしてしまうことがあります。また、危険な操縦をしてしまったり、機体の取扱いを誤ってしまうこともあります。しかし、「ラジオコントロール」が分かっていれば、機体の動く仕組みや原理が頭に入っているので、一つひとつの動作が慎重かつ確実なものになります。それは自動車の運転でいうと、標識の意味が分かれば分かるほど、運転が慎重かつ正確になるのと同じことです。「ラジオコントロール」を理解すれば、進路や入力の方法などに気を配り、慎重に機体を飛行させる、大切に取り扱うという意識が芽生えます。

「ラジオコントロール」を習得すべき理由2

「安全な飛行」に必要な知識や技術が養える

「ラジオコントロール」を学ぶことで、ドローンの「安全な飛行」に対する知識・技術が養われます。事故や墜落を起こす原因として、電波に対する知識不足があります。また、機体の取扱いに対する知識不足があります。機体の安全装置に頼り過ぎていたり、安全装置が効かなくなったときに対応できる操縦力がないことも、墜落や事故の原因です。しかし、「ラジオコントロール」が分かっていれば、予期せぬ出来事が起きても冷静に対処できます。例えば、「この場所はGPSが切れることが分かっているので、この機体をこのルートで、こういう操縦で飛ばそう」など、あらかじめ具体的な計画が立てられます。こうした事前の予測の積み重ねだけが、危険予測や危機回避の技量を高め、安全な操縦を可能にしてくれます。

「ラジオコントロール」を習得すべき理由3

「安全な飛行」を誰から習えばよいか分かる

「ラジオコントロール」を学ぶことで、ドローンの安全な飛行を学べる人を自分で見つけられます。現状、日本には安全な飛行を教えられる人や団体があまりありません。それは、年々ドローンスクールの数が増えているにもかかわらず、国土交通省の事故報告事例が増えていることからも分かります(普通はスクールが増えれば、事故は減らなければいけないはずです)。しかし、「ラジオコントロール」が分かれば、他人の飛ばしている機体の挙動を見ただけで、それが「安全な飛行」か「危険な飛行」かが自分で判断できます。また、動画投稿サイトやSNSで発信されているドローンやラジコンについての情報が、いかに間違ったことばかりかということも分かります。それらが分かれば、情報の森の中で、「今もっとも自分に必要な葉っぱ」を自分で見つけられます。つまり、誰を師匠にすればよいかが判断できるのです。

「ラジオコントロール」を学べば
墜落や事故を予防できる

「ラジオコントロール」を学ぶことで、ドローンの事故や墜落を予防できます。事故や墜落の決定的な原因は、機体の挙動がおかしくなったとき、操縦者がパニックになってしまうことです。もし「ラジオコントロール」を理解していれば、事故や墜落の予防、対処ができます。例えば、風が強いときは機体のう動きがよくなる設定をすることで、壁への激突を防げます。実際に、私は動画撮影の仕事では、素早く動く被写体とゆっくり動く被写体とで、機体の設定を変えています。そうしないと操縦を誤ってしまうからです。前回お話した、売上世界一のエナジードリンクのCM撮影時に、企業側のドローン・パイロットが機体を落とし、燃やしてしまったのも、「ラジオコントロール」の理解がなかったからだと考えられます。その場に合わせた飛行の設定や調整ができないことは、事故につながる要因でもあるのです。

また、「ラジオコントロール」を学ぶことで、機体の不具合にも気づきやすくなります。私のドローンスクールでは「ラジオコントロール」を学ぶ過程で、ラジコンカーやラジコンヘリ・飛行機の模型を使います。また、故障した「マルチコプター」を分解して、不具合を見ることも行います。例えば、ローターがガタガタしていて、調べてみたらビスが緩んでいた、ということはよくあります。そのまま機体を飛ばそうとすれば、ローターが吹っ飛んで非常に危険です。そこでビスを締めるわけですが、もし力加減を間違えたり、安いドライバーやサイズの異なるビットを使ったりすると、ビスがナメてしまいます。そういうことを、「ラジオコントロール」を学ぶ過程で経験します。こうした地味な事柄を積み重ねることで、事故の起きにくい機体に整えることができます。

「ラジオコントロール」を効果的に学ぶ方法

ドローンの事故を防止する「ラジコンの技術」後編
タミヤの「TT02B」を走らせるフリークスガレージの生徒たち。送信機の設定を変えれば、ラジコンカーをドローンと同じようなスティック操作で動かせる。そのため、陸で安全にドローンの練習ができるということだ。

それでは、「ラジオコントロール」を学ぶ方法をお伝えします。まず、ドローンの上達にはラジコンカーが近道ということを理解していきます。次に、トイ市場向けラジコンと本格的なホビー系ラジコンカーの違いを理解していきます。そして、最後にラジコンカーの練習方法を理解していきます。

ドローンの上達は「ラジコンカー」が近道

ドローンを安全に飛ばすには「ラジオコントロール」の知識が不可欠ですが、独学が難しい世界です。その理由は、ラジコンという趣味は専門分野の集合体だからです。模型工作、電気、操縦技術に関する専門用語が飛び交うため、初心者が入門しにくいことがあります。また、自分でラジオコントロール模型を触って遊びながら覚えていくという世界なので、本屋に行っても体系的に学べる書籍はほとんどありません。タミヤや京商といった老舗のメーカーが監修した特集本やパンフレットが出ていますが、ラジコンに馴染みがないと読み進めるのが大変です。

さらにインターネットやYou Tubeには、48年間ラジコンをやっている私からすれば、誤った情報ばかりが氾濫しています。さらに、ここで言うラジオコントロール模型は玩具ではなく、本格的なホビー仕様のもであり、取扱いを間違えると火を吹いたり他者に怪我を負わせることもあり、危険な要素が含まれています。こうした背景もあって、馴染みのない方は何から始めればよいか分からないものです。

そこで「ラジオコントロール」を学ぶには、まずラジコンカーから入ることをお薦めします。「えっ、陸を走るラジコンカーと空を飛ぶドローンに何の関係が?」と思うかもしれません。実は、ラジコンカーにはドローンと共通するさまざまな装置や設定が使われています。そのため、ドローンと同じスティックタイプの送信機でもラジコンカーを操縦できますし、指の動かし方を同じように設定して練習することもできます。さらに、ラジコンカーなら安全に低コストで、あまり場所を選ばず練習ができます。詳しくお話しましょう。

ラジコンカーを練習するとドローンの操縦感覚が養われます。なぜなら、ラジコンカーもドローンも「ラジオコントロール=電波による無線遠隔操作」という意味で共通しているからです。ラジコンカーは二次元で平面的、ドローンは三次元で立体的、そういう違いはありますが、どちらにも空間的な操作能力が必要です。そのためラジコンカーを教材にすれば、「ラジオコントロール」を学びつつ、操縦のための空間認識能力も養えるのです。

前述のように、ラジコンカーはドローンと共通の装置や構造、設定が多く使われています。それは当然で、何度も言いますがドローンの土台には「ラジオコントロール」があるからです。例えば、機体にはESC(スピードコントローラー)やモーター、ジャイロなど、さまざまな装置が組み込まれています。

私はラジコンカーを中学生の頃から始めていて、かれこれ48年くらい楽しんでいます。そのため、日本で初めてマルチコプターを開発する場面に携わったとき、仕組みや構造、調整のポイントがすぐに分かりました。日頃からラジコンに触れていると、他のドローン・パイロットよりも構造の理解が早くなります。

ラジコンカーを通して、ドローンの専門用語も覚えられます。そもそもラジコンカーにまつわる用語を知らないと、この業界やプロの方たちと話ができません。例えば、ドローンで30kgの荷物を積み、運搬するとします。そのとき、パワーが必要なのでバッテリーの放電レートを変えます。ただ、いたずらにパワーを上げると壊れてしまいます。単純に「2セルの7.4Vを3セルの11.1Vにする」というような話ではないからです。今の話もラジコンをやっていない人には何の話か分からないと思います。しかし、現場ではこういうレベルで会話をします。ドローンの機体を買うにも作るにも、設定や調整・修理をするにも、すべてに通じる考え方をラジコンカーに触れることで養えます。

一般的に、ラジコンカーはホイラー・タイプと称される丸いステアリングとトリガータイプのレバーが付いた送信機で操縦します。しかし、スティックタイプの送信機でも操縦できますので、ドローン操縦と同じ指の動かし方で扱えます。「ラジオコントロール」が分かっていれば、ドローンと同じ操作になるようスティックを割り当てられます。そして、マルチコプターやヘリ、飛行機と同じような操作感覚でラジコンカーを動かせます。前後の移動はエレベーターに、左右の移動はエルロンに設定します。実際、私の講座でラジコンカーを学んでいる生徒の多くは、Futaba製の6K送信機に前述のチャンネルを割り当てて練習しています。

ラジコンカーであれば、安全に、低コストで、あまり場所を選ばずにドローンの安全な飛行のための練習ができます。ドローンを練習しようと思うと、墜落や事故の危険があるため、気軽に練習ができません。また、どこかにぶつければ故障し、修理が高額になる場合もあります。そもそも、飛ばすには屋内・屋外問わず、広い場所が必要なので、練習する環境を整えるのが難しいものです。しかし、ラジコンカーであれば自宅の庭や駐車場など、ちょっとした空間があれば練習できます(ただし公共の場でラジコンカーを走らせるには許可が必要です)。地上を走るので、どこかにぶつけてもドローンほどの被害はでません。壊れにくいポリカーボネイト製のボディやシャーシにはバンパーをつけることもできます。もしクラッシュして破損させても、樹脂製の量産パーツであればコストもたかが知れています。自分で組み立てたものなら自分で修理したり、オプションパーツを取り付けたり組み換えたりして、チューニングすることも可能です。

トイ系のラジコンカーと
ホビー系ラジコンカーの違い

ラジコンカーを始める場合、買うのはホビーラジコンの方です。ラジコンカーと一口で言っても、トイ市場向けモデルと本格仕様のホビー系モデルの2種類に大別できます。トイ市場向けとホビー系は、まったく別物といってよいでしょう。具体的には、以下4つの違いがあります。
・性能が違う
・送信機が違う
・売り場が違う
・値段が違う

性能が違う

トイ系とホビー系では中身が違い、それによって発揮できる性能が違います。パワーソースで言えばトイ系は乾電池ですが、ホビー系ではリチウム系の充電池を使います。パワーの出方や大きさ、制御、そして構成部品が異なります。またトイ系には別売りのパーツがありません。そのため、元どおりに直すどころか改造・強化ができず、壊れたらメーカーに直してもらうか買い替えるしかありません。しかし、ホビー系なら基本となるシャーシ構成部品や改造・強化のためのオプションパーツがあり、自分で修理やカスタマイズが行なえます。動作に関するメカ類も別売りで、目的や好みに応じたものが選べます。ホビー系をお勧めする理由は、自分で修理や強化、調整が行えないものは、プロとしての練習に応えられないからなのです。

送信機が違う

トイ系とホビー系では送信機が違います。それは、もちろん制御のレベルが違うことを意味しています。例えばトイ系の送信機だと、ステアリングを切っても、まっすぐ(ニュートラル)から右か左に目一杯にしか切れません。0か100かの両極端な動きで、中間がないのです。しかし、ホビー系の送信機は、その中間があり、0から100までの間を微妙に動かせます。切る量や速さなど、繊細なステアリング操作(入力)に対応してくれます。ハンドルを1度動かせばタイヤも1度動きます。5度なら5度。こういう動きのことを、プロポーショナルシステム(比例制御)と言います。多くのラジコンユーザーが送信機をプロポと呼んでいるのは、その略称だからなのです。あと、送信機の電波もトイ系だと地上10mくらいしか届きませんが、ホビー系なら500mほど届きます。

売り場が違う

トイ系とホビー系では、売り場も違います。トイ系は玩具屋で買えます。一方のホビー系は、ラジコンショップや模型屋などの専門店で買えますし、パーツも豊富に取り揃えられています。また経験豊富なスタッフや、レースで上位に入賞するような腕前を持ったお客さんも来店するなど、知識や経験値のレベルが高いのが特徴です。そこで得られる情報量などを考えると、ホビー系ラジコンカーをどこで買うのがよいかは明白でしょう。

値段が違う

トイ系とホビー系では値段が違います。トイ系は、対象年齢もあり低価格なのが特徴です。電池を入れればすぐ遊べる完成品セットが、だいたい1万円以下で入手可能です。片やホビー系では入門用シャーシがキットだけでも1万円以上、ミドルクラスのキットで2~3万円はします。ハイエンドなら6万円以上のものもざらにあります。キットだけでは走らせることはできず、サーボをはじめモーターやESC、送・受信機といったメカ類や、走行用バッテリーと充電器の費用もかかります。このほか組立工具や塗料など周辺材料も含め、費用がそれなりにかかる本気の趣味なのです。私が中学生の頃の話ですが、ホビー系ラジコンをやりたくても、お年玉を3年貯めないと買えないほどでした。

「ラジコンカー」の練習方法

それでは、「ラジコンカー」を買った後の練習方法をお話します。以下3つの流れで進めていきます。
・「ラジコンカー」を組み立てる
・送信機に操縦を割り当てる
・「8の字」で走れるようにする

「ラジコンカー」を組み立てる

まずは、自力でラジコンカーを組み立てます。シャーシの組み立て、メカの積み込みにより動作の仕組みや構造が理解できます。また、バッテリーの種類をはじめ、電圧や電流値、種類に合わせたモードでの充電といった充電器の取扱いなども覚えていきます。

注意点として、工具は100円ショップではなく、ホームセンターなどの専門店で買うようにしてください。安い工具は精度や品質に難があることが多く、組み立てがうまくできず(うまくねじの締込みができなかったり)、完成後の走りに悪影響が出ます。また、説明書は慣れない初心者に分かりにくい部分もあります。できれば経験者、上級者など、ラジコンカーをよく理解している人に見てもらいながら作ることをお薦めします。

送信機に操縦を割り当てる

次に、ドローンで使う2スティック・タイプの4ch送信機に、カー用の操縦を割り当てます。ラジコンカーの操縦にはスロットルとステアリングという2つのチャンネルしか使いませんから、前・後の動き(スロットル)はエレベーターに、左・右のハンドル操作(ステアリング)をエルロンに設定します。4ch送信機に、このようなラジコンカー用の2チャンネルを割り当てることはイレギュラーなので、なかなか教えてくれるところはありません。でも「ラジオコントロール」がよく分かっている人ならば、「あぁ、そういうことね」とすぐ応用力を見せてくれます。設定で困った時は迷わず経験者を頼りましょう。

8の字走行ができるようにする

まずはまっすぐ直進するようにステアリングのニュートラルを合わせます(左右の舵角と旋回半径も)。これがずれていると練習にならないので、とても重要な手順です。走行前は毎回確認するところですし、サーキットを走る際は、そのコースの最小コーナーに旋回半径を合わせることも必要です。これにより、ドローン飛行前の蛇チェックと同様に、いきなり動かさず、きちんと車体(機体)が整備・調整されているかの確認を、最初に行うという習慣が身につきます。

地面を走行するラジコンカーの操縦でもドローン操縦に必要な対面操縦、ステアリングの補正(当て舵)、滑らかなスティックワークを学ぶことができます。コーナリングの大きさに合わせた正確なステアリングとスロットルの操作(2蛇の入力のコンビネーション)は、狙い通りにドローンを旋回させる基盤にもなります。また充電不良で走行中に停止してしまったり、整備不良でタイヤが外れてしまったり、ノーコンで暴走してしまうことも体験するかもしれません。しかしこの経験と、なぜトラブルが起きたのか原因を確認しておくことは重要で、事前にトラブルの芽を潰しておくクセがつき、やがてドローンの安全運行にも役立てられるようになるわけです。

ひとまずの目標は、きれいな8の字で走行できること。左回り・右回り、正面・対面と、縦8の字、横8の字と、バランスよく練習します。このとき、空中でドローンを飛ばしているような感覚で操作するのがポイントです。ラジコンカーできれいな8の字走行ができれば、その感覚を活かして、ドローンでもきれいな8の字を描けるようになります。ラジコンカーの操作を経験しておくことで無線操縦の基礎、ドローン操縦の下地がしっかりと身につくことがお分かりいただけると思います。

これから「遠隔操作」の時代がやってくる

ドローンの事故を防止する「ラジコンの技術」後編
『最新ドローン完全攻略』でも連載を持つ、RCカー世界チャンピオンの広坂正美氏(ジーフォース所属)と、ラジコンについて談笑する中村氏。会うといつもラジコンの魅力や将来について熱く語り合う。2人とも、ラジコン業界を盛り上げようと活動中。

今後は「ラジオコントロール」の仕事が注目されてくるでしょう。あなたは、そこでチャンスをつかめる人でしょうか? もし、その波に乗りたいなら「ラジオコントロール」の知識と技術が不可欠です。

「ラジコン」の仕事で
チャンスをつかめるか?

今後、「ラジオコントロール」に長けた人が重宝される時代になります。なぜなら、これから空だけでなく、陸や海(水中)でも「遠隔操作」の仕事が増えるからです。実際、私はUAV(無人航空機)だけでなく、UUV(無人潜水機)やUGV(無人地上車両)の仕事もしていますが、その中で、空以外の遠隔操作の重要性を強く感じています。そこで最近、私は「ラジオコントロール」の普及を進めるべく、AUG計画(アグ計画)と銘打った活動も開始しました。UAV、UUV、UGV、それぞれの真ん中のアルファベットを並べてAUGです。遠隔操作に長けた人材を育てるための教育活動です。

今、私が考えているのは、もしかするとUUV(無人潜水機)の方が、UAVより先に実用化が進むかもしれないということです。その理由は、UAVと違ってUUVは墜落しないからです。日本でUAV産業がいまひとつ発展していないのは、墜落や事故が多いからです。しかし、墜落や事故が少なければ、どんどん企業も実務で使い始めます。実際、私も「独立行政法人 水資源機構」が管理するダムで、橋の点検や水質、沈殿物の調査、また養魚場で網の点検などをやっていますが、大変スピーディーにデータが取れます。大幅なコストダウンができます。以前、北海道・知床半島沖で観光船KAZUⅠ(カズワン)が沈没した痛ましい事故がありましたが、UUVにより、人間が確認するよりも数ヶ月前に船艇の確認ができました。UUVであれば、水中を素早く安全に調査できます。

しかし、UUV(無人潜水機)の操縦は難しいものです。UAVを飛ばすよりも難しいと感じます。なぜなら、水中では船体が目視できないからです。また、水流が強い場所では船体が流されることもよくあります。なので、UUVもUAV以上に教育が重要となります。誰からどう学ぶかは、これからの日本の課題になるでしょう。教育面が充実すれば、どんどん企業でもUUVを使っていけるはずです。

UGV(無人地上車両)も、どんどん産業として発展していくでしょう。例えば、遠隔操作で走る車両やロボットにカメラをつければ、人が入れないところの調査ができます。ラジコンカーにカメラをつけて走らせれば、家屋の床下のシロアリ被害なども、簡単に調べられます。また、車両やロボットにアームをつければ、人が入れないところのモノが取れます。実際、福島第一原発の燃料デブリの取り出しは、遠隔操作で行われています。以前私も、災害現場を模したジオラマを作り、そこで小型のカメラとアームをつけた車両を子どもたちに遠隔操作させ、がれき撤去の仕事を疑似体験してもらったことがあります。やはり子どもは覚えるのが早い! 楽しみながら、すぐに操作を覚えていきます。

これから、ますます遠隔操作の仕事が増えていきます。なぜなら、人が行かなくてもよい、やらなくてもよい作業は、遠隔操作で代替できるからです。私がUAVによる撮影を任されている大手重機メーカーでは、例えば千葉県の現場のショベルカーを、東京のオフィスでスーツを着た社員が遠隔操作で動かすということをしています。セブンイレブンでは、冷蔵庫のドリンクの補充をロボットがやります。ロボットは、冷蔵庫に1日いても凍えることなく、文句一つ言わずに働きます。ロボットは、本社にいるスタッフが遠隔操作で動かします。ただ、通信システムが5Gの現在、まだまだ遅延があるため完全にうまくはいっていないようで、今後6Gになれば本格的に普及が進むでしょう。

遠隔操作は、自動化を視野に入れて発展していきますが、今はまだ人の手による操作が不可欠です。例えば、今、各地で大手企業がUAVの自動航行の実証実験を行っています。しかし、まだまだ完全な遠隔化・自動化は実現できていません。よく関係者から話を聞きますが、ここだけの話、大手企業も機体を墜落させています。その理由は、プログラミングをする人が「ラジオコントロール」をあまり理解していないからだと言えます。ラジコンの理解がないと、安全な遠隔操作や自動航行はできません。人が携わる以上、必ずミスは起こります。だからこそ、安全に対する意識や知識・技術が問われます。なので、今後もまだまだ「ラジオコントロールの知識」と「マニュアル(手動)操作の技術」は、遠隔操作に携わるなら必須のスキルです。

「ラジオコントロール」の知識と技術が不可欠に

まだまだ日本ではラジコン=おもちゃという認識です。「趣味はラジコンです」と言えば、「そんなので遊んで……」と言われます。しかし、欧米ではラジコン=高貴な趣味という認識ですから「すごいね!」と言われます。こういう認識が変わらないと、まだまだ日本で「ラジオコントロール」は広まっていかないでしょう。

国も、「ラジオコントロール」の重要性を分かっていません。近年、法律によるラジコンユーザーの締め付けがひどくなっています。航空法ができ、このたびの機体登録制度により、これまで趣味でラジコンをやっていた人たちが気軽にできなくなっています。当然、これからやってみたいという人々のハードルも高くなりました。もちろん、新たな法律を加えるのは、事故を起こす人が深刻なまでに増えてきたからというのは分かります。しかし、ラジコン模型を楽しむ人が減ることで、ますます事故が増えるはずです。なぜなら、このままではラジコンの知識がない多くの人がマルチコプターを飛ばすことになるからです。これではドローン業界は衰退し、日本は世界から取り残されてしまいます。

ラジコン模型を楽しんでいる人々は、安全な操縦や運行・飛行について熟知しています。知識や技術も高く、空を飛ぶ機体を、非常に安全に操縦できます。実際、「ラジコンヘリ・飛行機の経験はあるが、マルチコプターは飛ばしたことがない」という人が私のもとによく訪れますが、「自動でホバリングする機能がない機体」(例えばマイクロドローン)を渡しても、初めてなのにすぐ慣れて、スイスイ飛ばします。逆に、安定飛行アシスト機能が万全のGPS搭載機ばかり飛ばしている人にマイクロドローンを渡すと、すぐに壁にぶつけてしまい、「ちゃんと飛びません。これ壊れてしませんか?」と聞いてくる始末です。この圧倒的な技術差は「ラジオコントロール」の経験の違いによるものです。

これからの遠隔操作時代に対応するには、国を上げて「ラジオコントロール」についての教育をしていかなければなりません。それも、正しい教育を。たった数日マルチコプターの簡単な操縦を教えただけで卒業させて民間資格を与え、あとは飛ばす人の責任という風潮が続けば、いつまで経っても墜落や事故はなくなりません。このままでは、日本=事故ばかりのドローン大国というレッテルを貼られ、世界から笑われてしまいます。

「ラジオコントロール」をよく理解している人々が講師となり、安全な操縦の教育をしていかなければ、日本の遠隔操作“力”の発展はありません。これからの日本の遠隔操作の時代を憂いながら、今回はペンを置きます。お読みいただきありがとうございました。

「ラジオコントロール」も含めた
ドローン全般のサポート

今回は、ドローンの事故を防止するための「ラジオコントロール」についてお話しました。フリークスガレージでは、「ラジオコントロール」の知識がない人を対象にした『ラジコン・マスタークラス』という授業も行っています。生徒たちは、「ラジオコントロール」についての概要や専門知識を学び、実際に「ホビーラジコン」の模型を組み立て、コースでは知らせながら操縦を学んでいます。ラジコンカー、ラジコンヘリコプター、ラジコン飛行機を教材としている学校は、日本でも珍しいと思います。

フリークスガレージは、20年以上も前から「ラジオコントロール」の教育を先駆けて行ってきました。もし「遠隔操作」でお困りのことがあれば、ぜひご相談ください。圧倒的な提案力で御社のご要望にお応えいたします。

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